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自分に有害な習慣をやめていくこと、それがアレクサンダー・テクニーク

前回のブログ更新から1年が経ってしまいました。この1年で地域社会と関わる活動を始めたのですが、それが思いのほか時間を費やしたことと、アレクサンダー・テクニークのプライベートレッスンを受け始めたことも大きかったと思います。

プライベートレッスンによって、自分の身体の使い方の探究が大幅に更新され、常に発見の連続でした。あまりにも変化と発見の連続で、記録が追いつけないほどでした。

アレクサンダー・テクニークって何?と聞かれたら、今の私なら「自分に有害な習慣をやめていくこと」と答えます。この1年で私は本当にたくさんの、「自分に有害な習慣」に気づくことができました。気づくこと、そして習慣を辞めていくこと、それこそがアレクサンダー・テクニークなのです。

アレクサンダーテクニークの基本は頭(頭蓋骨)と脊椎全体から始まります。頭蓋骨と脊椎の関節(トップジョイント)がどこにあるかさえ、私たちは明確に教えられていません。だからこの関節をあまりにも頻繁に固めてしまいます。

このトップジョイントの存在と機能を知ること、そしてこの関節に変化を起こす(自由に動く)こと、さらにトップジョイントから始まる脊椎全体の関節が自由であること。そして、からだ全体が自由なまま日常的な活動(歩いたり座ったり)を行うこと。

アレクサンダー・テクニークのレッスンはひたすらこれであると言ってもいいと思います。とてもシンプルなのです。でも、私はこのプロセスにもう8年も費やしています。

私は人よりも“大変”なのかもしれません。私のプライベートレッスンの教師である石田康裕先生いわく、「あなたは普通の人にはできないことをやっている」のだそうです。つまり、普通ならあまりない身体の箇所に力を入れていて、それが常態化している。普通の人にとっては努力を要することを、私は習慣化させているようです。

思うに、多くの“まじめなダンサー”、もしくは良い姿勢を求められる習い事を長年行っている人には、少なからずこの傾向があるのではないでしょうか。

この数年で徐々に気づいたことは、自分が挙げていると思っていた胸を実は下げていたこと、喉のあたりの違和感、胃のあたりの違和感は脊椎の下方への引っ張り(自分が引っ張っている)が原因だったことです。これは驚愕の事実でした。

最近の大きな発見は、自分は頚椎の下部(C7付近)、胸椎の中央(T6付近)をいつも潰している(下方向に引っ張っている)ということです。

この違和感はずっと感じていたのですが、どうしたら変えられるのかわからなかったので、それについてはあまり考えずにいました。康裕先生に、“ここを下げていますね”と言われても、何のことかさっぱりわからなかったのです。「もしかして、このこと?」と自分が気づけるまでに、けっこうな時間を要してしまいました。

たとえばアレクサンダーテクニークをまったく知らない人に「あなたはここを潰していますね」と言うと、たいていの人はすぐにそこを“伸ばそう”としてしまいます。それが上手くいくことはまれで、たいていの場合は別の緊張を生んでしまいます。それまでの“習慣を辞めずに”、指摘された部分だけを変えようとするからです。

実際、康裕先生は私の問題がどこにあるかを知っていたけれど、そこを無理に変えようとすることは決してしませんでした。部分にとらわれてはいけない、全体的な変化を起こさなければ変われないからです。だから、頭と脊椎からのアプローチをひたすら探求することがずっと続きました。

ときには他の部分について考えることもあります。たとえば首の緊張や腕の位置、背中を下げてしまうことです。なぜなら、それらはすべて下方向への引っ張りであり、頭や脊椎全体の関節が自由になるためには、その引っ張りが妨げになってしまうからです。

これを最初に知ると、多くの人は、“がんばって上げよう”としてしまいます。私も漏れなくそうであり、今も上げようとしてしまう自分とせめぎ合っています。でもこれは、“上げる”のではなく“下げているのを辞める”なのです。

たとえば旗が倒れかかって上手くはためかないとしたら、どうやって直すでしょうか。たとえばダラリと沈んでいるあやつり人形を生き生きとさせるにはどうするでしょうか? 倒れたポールを立てたり、あやつり人形の脚が地面につく程度に持ち上げたりしますよね。でもこれは、上に上げればよいということではなく、“本来の長さに戻す”ことで本来の機能を取り戻させているわけです。

人間の身体も骨が一定の距離を保ち、筋肉が一定の張りをもてば生き生きしてきます。あやつり人形と旗の構造が違うように、人間の身体は複雑なデザインなので、問題はどのように骨と骨が広がるか、なのです。

習慣の多くは下方向への引っ張りから起きます。これを変えるには、下方向への引っ張りを辞めていくこと。ただそれだけです。シンプルだけど、単純ではない。難しくはないけど、簡単ではない。難しいのは自分の習慣に気づくことと、習慣から離れることです。そして時間を要するのは、何が起きているかを正確に知ることであり、これは原因が何か探求しようという意志がなければ見つけられないのです。

もし私がアレクサンダーテクニークに出会うことなく、習慣をずっと続けていたらどうなっているでしょうか。血流の悪い状態がずっと続き、内臓は圧迫され続け、浅い呼吸が何十年も続いたら、当然病気を招いてしまうでしょう。多くの成人病は、食習慣や生活習慣だけでなく身体の使い方もかなり影響しているのでないかと思っています。

私は長年、自分の肩が凝っていることに気づいていましたが、それについてあまり目を向けないできました。なぜなら深刻な痛みや苦しみがあるほどではなかったし、原因がわからなかったからです。整体院にいけば、1日くらいは解消できるかもしれませんが、またすぐに元に戻ることはわかっていました。医者も整体師も、原因については語りたがらないものです。

その肩凝りの原因が、もしかしたら先ほど言及した頚椎と胸椎の下方への引っ張りなのではないかと最近推測し、探究・実験しています。同じように、生理痛や頭痛についてもずっと自分で探求してきました。どれも原因は脊椎全体でした。

生理痛については若かったためか、骨盤を変えたらすぐに改善したのですが、更年期から悩まされた頭痛についてはだいぶ時間がかかりました。それでもトップジョイントを知ったときに少し変化があり、それから自分の脊椎全体のいろいろな気づきを得て、今ではかなり改善しました。過去10年で頭痛薬を飲んだのは1〜2回です。

身体の痛み、違和感はすべて身体からのサインです。世間では薬でごまかしてしまうことばかり教えられますが、このサインを無視することなく、耳を傾けることで、私たちは年齢に関係なく自分を改善していけるのではないかと思っています。アレクサンダー・テクニークが、身体の使い方に限らず、“自分の使い方”であると言われるのはそれが故です。

「動きの解剖学」科学新聞社より
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