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憧れは動物のようにしなやかな動き~自分本来の身体感覚を取り戻す

アレクサンダーテクニークを学び始めると、「そういえば腰痛がなくなった」「股関節の詰まりがなくなった」「胃の不快感がなくなった」「お通じが良くなった」、さらには「花粉症が軽くなった」という現象が起きます。

これは、アレクサンダーテクニークがある症状に「効く」ということではなく、身体の使い方が良くなったことで身体本来のシステムが蘇ったということではないかと思います。

ケガや病気をしたとき、動物は自分で治す方法を知っています。食べずに寝て内臓や身体を休める。毒素を排出する。関節を痛めてしまった猫は、奇妙なストレッチを何日か繰り返していたと思ったら、数日後にはキレイに治ってしまったという話を聞いたことがあります。

ところが人間は、痛みがあっても薬で感覚を麻痺させたり、自分の感性よりも医者の言うことを優先させたりします。自分の身体が発しているサインを無視して、時間通りに行動すること、我慢することに慣れてしまっているのです。

私も以前は、風邪をひいたらすぐに医者に行って薬をもらうべきだと思っていました。人はみんな、やらなければいけないことを抱えています。だから、できるだけ早く不快症状から逃れようとしてしまうものです。

でもアレクサンダーテクニークを学ぶようになってから、自分の身体に何が起きているのか、根本原因に対処するにはどうしたらいいかを考えるようになりました。多くの場合、身体の緊張から痛みが生じています。

たとえば頭痛が起きるときには頭から首、背中にかけての緊張が著しく、呼吸も浅くなっています。そんなときは頭をわずかに頚椎から離し、肋骨が全部動いて背中が広がることを思いながらゆっくり呼吸をしてみると、フッと痛みが遠のく瞬間があります。

頭で考えて「動かす」のではなく、身体が「動きたい方向に動いてくれるのを許す」ようにすることがポイントで、それには鋭敏な感性と繊細な身体感覚が必要です。これは人間が本来持つ動物的な本能ともいっていい感覚で、アレクサンダーテクニークの学校では「新しい脳」ではなく「古い脳」だと習いました。

これを練習していくと、しだいに身体感覚が鋭敏になってきます。特に、常態化した緊張をやめて解放感を一度味わうと、自分自身が苦しみを生み出していることに気づきます。つまり、自分を解放できるのは自分自身なのです。

ダンサーの多くは背面を緊張させています。踊りを始める前はそんなに激しい癖ではなかったのに、もっと上手くなろうという思いが強くなるほど癖を助長させてしまったり、新しい癖を身につけたりしてしまう場合も少なくありません。つまり、身体に不必要な緊張を加えてしまうのです。

現代人は頭ばかり使い過ぎています。体に良いとされることばかりしたり、体に悪いとされることを避けたりしても、それは所詮、頭が考えること。「良い姿勢」と思い込んでいる形に執着してしまうのも同じです。「身体を使う」とは、頭で身体をコントロールすることではなく、身体本来の能力を生かしていくものではないかと思うのです。

かくいう私自身が、身体と向き合うことには本当に苦労しています。実際、私たちは頭ばかり使うように教育されてきました。憧れは動物のように優雅に身体を使うこと。長い間に身につけてしまった習慣を、「もうそんなにがんばらなくていいよ」と手放していくこと。これは身体があるかぎり続いていく学びですが、生涯をかけてでも取り組みたい学びなのです。

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