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脊椎のしなやかさは頭の重さから解放されることで生まれる~頭と脊椎の関係性とは

ダンスのレッスンを受けている人はよく「軸」という言葉を耳にするのではないでしょうか。身体の安定感を保つため「軸をつくる」などとよく言われたりしますが、実は身体の軸というのはつくるものではなく、すでにあるものです。この「軸」こそが頭と脊椎であり、「軸骨格」とは主に頭骸骨と脊椎のことを指します。人間の身体の中枢となる部分です。

人間のデザインの最大のポイントは、脊椎の上に頭がのっているということです。しかも人間の頭の重量は5キロ以上といわれます。ペットボトル500㎖10本分、またはお米の5キロを手に持ってみると想像しただけで、その重さがわかります。その重い頭を、細い首の上でバランスさせながら、歩いたり踊ったり、さまざまな活動をしているのが人間なのです。

では、頭と脊椎がどのように接しているか、考えたことがあるでしょうか。頭と脊椎の関節はどこにあるのでしょう?私はアレクサンダー・テクニークに出会うまで一度も考えことがありませんでした。

脊椎は、下は尾骨から上は環椎と呼ばれる頸椎の一番上の骨まで、24本の骨が積み重なるような構造をしています。その一番上の環椎と頭蓋骨が接する関節をトップジョイント(AOジョイント)と呼びます。このトップジョイントの位置について、多くの人は思い違いをしています。実はトップジョイントは、私たちが思う以上に高いところにあるのです。

上の図のようにトップジョイントは、ほぼ耳の高さにあります。つまり、脊椎(頸椎)は耳の高さまであるのです。その脊椎のあまりの長さに多くの人が驚きます。私もこの事実を知ったとき、それまでの身体地図がガラガラと音を立てて崩れました。

このトップジョイントの周辺には、後頭下筋群というたくさんの細かい筋肉があり、頭と脊椎をつないでいます。これらの深層の筋肉は、主に眼の動きや感情的な反応などによって、非常に繊細に動きが起こります。たとえばびっくりしたときには人間は咄嗟にこの筋肉を固めますが、これは危機的な状況で大事な頭を守るための防衛反応なのです。

ところが多くの人が、この関節を必要以上に固めてしまっています。環境や教育やストレス(思考)などにより、それほど危機的でない状況にも反応してしまったり、また不必要な緊張が慢性化してしまうのです。

「力を抜いて」と言われても、どのように抜いたらよいかわからない。どこかに力が入っているような気がするけど、どこに力が入っているかわからない。そう感じている人は多いのではないでしょうか? 頭で考えすぎてしまうこと、うまくやらなければという思い、さまざまな無意識の緊張が、実は私たちの自然な動きを妨げてしまいます。

アレクサンダー・テクニークのレッスンは、まずこのトップジョイントの緊張に気づき、「脊椎の上で頭が動く」という体験をすることから始まります。ごくシンプルな動き、たとえば上を見る、下を見る、といった何気ない動きを丁寧に行うことで、頭と脊椎の関係性が変化するという体験をします。こうした体験を繰り返していくことで、自分の身体に対する感受性が高まり、習慣が徐々に変化していくのです。

トップジョイントの緊張が緩和されると、脊椎全体に変化が生まれます。頭の重さから脊椎が解放されることで、脊椎全体が長くなり、しなやかな動きを取り戻します。肋骨や骨盤、そして腕や脚も脊椎に付随して関節の自由度を増し、全身に変容が生まれるのです。反り腰や前肩、猫背、また内股やX脚なども、まずは頭の重さから脊椎を解放しなければ改善の方向に向かいません。すべては「軸」から変わっていくのです。

人間本来のデザインに合った自然な動きを取り戻すこと。それがアレクサンダー・テクニークの目的です。動物の動きはしなやかで無駄がありません。不必要な緊張をひとつひとつやめていくことで、動きはシンプルになり、本来の美しさを取り戻していきます。変容を起こしていくためには一定の時間と練習が必要ですが、身体が変わっていく、自分が変化していくプロセスは喜びそのものです。

次回は私自身に起きた変化について書きたいと思います。

Fatima(大島ふみこ)

引用元:ヒューマン・アナトミー・アトラス

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