1. HOME
  2. ブログ
  3. ストレッチとは~身体の使い方の偏りを減らし、全体性ある動きをつくる

ストレッチとは~身体の使い方の偏りを減らし、全体性ある動きをつくる

踊る人にとって、ストレッチは欠かせないものです。身体を柔らかく保ち、パフォーマンス力を上げる、そしてケガを防ぐことがその目的です。

たしかにストレッチを続けていると、身体は柔らかくなっていくように感じられます。でも本当に、動くべき関節が動いているのか、伸ばされるべき筋肉が伸びているのか。そこが大きな問題です。

私が気づいたことは、多くの人は、もともとゆるんでいるところはゆるみっぱなし、縮めているところは縮めたまま、ストレッチを行なっているこということです。つまり、身体のクセを変えないままストレッチをしているわけです。

たとえば、股関節と腰椎を混同している人はたくさんいます。肩甲骨を固めたまま腕や背中を伸ばそうとする人、背中を縮めたまま前屈する人もたくさんいます。こうしたやり方では、よりいっそう身体の使い方を偏らせるばかりで、パフォーマンスの向上どころかケガにもつながりかねません。

身体が固い人のほとんどは、関節を固めてしまうクセがあります。特に、頭と脊椎の関節を固めたままストレッチをすると、全身の関節が固まってしまいます。真面目に一生懸命やればやるほど、関節が固まってしまうのです。どうしたらそのやり方を変えられるか、別の視点で考えなければいけません。

たいていの人は自分の身体の“真実”を知りません。どこに緊張があり、どこがゆるんでいるか、正確にはわかっていません。ある部分の感覚は非常に強く、ある部分の感覚は非常に薄かったりします。「ここに問題がある」と本人が言い、ある部分をひどく気にかけているとしても、問題は別のところにあったりします。

私は長年、背中の筋肉をひどく縮めていました。身体の力を抜こうとすると肩を下げて、なおさら背中を縮めていました。自分ではそれが良い姿勢だと信じていましたから、自分が背中を縮めているという事実に気づいたときの衝撃、さらにそれを変えようとしても変えられない、恐ろしいまでの習慣の根深さに何度も落胆させられました。

でも、私にはなんとしてもそれを変えたいという意志がありました。というのは、若い頃は何ともなかったのですが、50代になると、身体の無理が体調に影響を及ぼすようになったのです。私の場合は頭痛や呼吸の難しさとして現れました。

丁寧に骨を動かしていくと、瞬間的に身体は変わっていきます。縮めていた筋肉は広がり、ゆるみ切っていた筋肉が働き始めます。急激に身体が軽くなり、内臓も動いてくるのがわかります。視界が広がり、感覚も鋭敏になって、生きる意欲のようなエネルギーが湧いてくる気さえします(実際、鬱の改善にもアレクサンダー・テクニークは効果があります)。ひどい頭痛も、骨を変えるとその瞬間、痛みが消えたりするのです。

問題はこの状態が、いともたやすく崩れてしまうことです。それが習慣の根深さです。

私は数十年、ストレッチを日課としていますが、ここ数年でそのクオリティが少しずつ変わってきたと思います。やっている内容は変わらないのですが、やり方が大きく変わりました。今思えば、以前のやり方は“骨が崩れた状態”で行っていたので、当然ながら身体の広がりは偏ったままでしたが、今は骨の本来の位置を考えながら行うようになりました。

端的に言えば、骨と骨が離れていけば筋肉は広がっていきます。筋肉は“伸びる”のではなく、受動的に“伸ばされる”ものです。そのためには、骨は本来のデザインに沿ったあるべき位置にあることが望ましく、それを崩さなければ、わずかな動きで身体全体が連動し、広がりながら動いていくことができます。

アレクサンダーテクニークでは「doing」から「being」へ、とよく言われます。何を”行う”かではなく、どう“ある”か。身体がどこも緊張せず、動きにしたがって広がりながら、それに連動して骨や筋肉が動くのを妨げず、身体本来の動きにまかせることができる。それが身体の全体性であり、協調作用なのです。

初めはまず、頭を動かしてみる、鎖骨を動かしてみる、肋骨を動かしてみる…ごくわずかな動きから始めます。自分にはどういう習慣があるかがわかったら、習慣とは違う方向に動く練習をします。そして、それらの動きがどうつながっていくか…慣れてくれば、まず頭が動いてそのあとに身体全体がついてくるようになります。

習慣を手放し、身体の使い方を変えることができたとき、慣れ親しんだストレッチは、ようやくその質を少しずつ高めていくことができます。そのとき、ストレッチは単なる運動から、身体への気づきを高め、身体と対話するものへと変わっていくでしょう。身体を偏りなく使い、すべての動きが統合された美しいストレッチは、当然、美しい踊りへとつながっていくのです。

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

関連記事