身体の使い方レッスン~もっと自由に踊るために
アレクサンダーテクニークの個人レッスンは、30分×10回のコースを基本としています。基本が10回であるということの意味について、理解していただく必要があると思います。
〈アレクサンダー・テクニークのレッスンの内容〉
- ①アレクサンダーテクニークの原理と簡単なボディマッピング。
- ②簡単な動作を「いつも通り」行う。
- ③同じ動作を「習慣とは違うやり方」で行う。
- ④古い習慣を新しい習慣に置き換えていくために練習を繰り返す。
- ⑤望みがあれば、パフォーマンスに新しい習慣を置き換えていく練習をする。
おおむね、レッスンはこのように進行します。レッスンではこの流れがゆっくり進む場合もあれば、このプロセスが何度も繰り返される場合もあります。
たとえば椅子から立ち上がるときに、多くの人は首を縮め、胸を上げようとして背中を緊張させてしまいます。たとえ、そのやり方になんの違和感も感じていないとしても、その「習慣から離れたやり方」で立ち上がってみたときに、初めて自分がやっていることを理解します。
習慣とは知らず知らず行っている身体的緊張であり、それが不必要な緊張を生み、動きを非効率的なものにしています。非効率的な動きは、身体的な不快さや痛みを招いたり、パフォーマンスを困難なものにします。アレクサンダーテクニークのレッスンは、自分がどのように身体を使っているか、気づきを得て、不必要な緊張をひとつずつ「やめていく」ことを練習します。
習慣は日常のあらゆるシーンで、踊るときにも、そして寝ているときでさえ、顔を出しているはずです。だからこそ、シンプルな動作を何度も繰り返し練習します。最初はまだるっこしいと感じるかもしれませんが、だんだん習慣から離れることができるようになると、普段の姿勢や踊り方は少しずつ変化していきます。
ひと口に「反り腰」「猫背」といっても、人によってタイプはさまざまです。姿勢というものは長い時間をかけて「習慣化した身体の使い方」なので、短時間にすぐ変わるものではありません。ほんのわずかな骨の崩れが、しだいに全体の崩れへと発展してその人の姿勢を形づくっているので、それを変えていくには身体に対する繊細な感性と「習慣的でないやり方」が必要となります。
このレッスンは、自分自身への気づきから始まります。そしてそこから、“どうしてもそうしてしまう自分”、古い習慣を手放す道のりが始まります。習慣は気づいた瞬間に古いものとなり、それを手放せば、残るのは新しい習慣だけです。ただ、習慣を手放すのは容易ではありません。
アレクサンダーテクニークのレッスンが基本10回であるのはそのためです。1回目のレッスンで自分の習慣に気づけたとしても、そのあと日常生活に戻れば、その習慣を変えるチャンスはやって来ないでしょう。しかし、10回300分(5時間)のレッスンを体験すれば、その人はある程度の「新しい習慣」を身に着けるようになります。
どのくらいの時間で習慣から離れられるか、というのは人それぞれです。私自身、もう6年間、習慣から離れる練習をしていますが、まだまだ習慣に囚われている自分を発見します。それでも、6年前の自分とはまったく違う自分であることも理解しています。アレクサンダー・テクニークを学ぶ人はほとんど、それがライフワークになっています。
動物たちの動きを観察してみましょう。猫はわずかなプリパレーション(準備動作)で見事なジャンプをしますし、好奇心のままクルクル回ることもできます。アレクサンダー・テクニークを学ぶ人が目的とするのは、動物たちのように無駄のない、効率的で、なおかつ美しい動きです。自然な動きを妨げているのは、無意識に行っている無駄な緊張です。それをひとつずつやめていったとき、少しずつ私たちは本来の動きを取り戻します。
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